内容のない手紙を送ろう

多趣味。にわか音楽好きのミーハーブログ。SKY-HI(a.k.a. AAA 日高光啓)、SixTONES(ジャニーズJr)、そして宝塚などなど。多趣味で、誤字脱字が多い。

SKY-HI の中国語カンペはなぜ香港で使い物にならなかったのか

それは3回目のMCの時。

SKY-HI: ウォー?
香港ファン:ンオー!

S: ウォー フェイ?
ファン:ンオー ウイ!

S: フェイ?
ファン:ウィ!
S: あ゛ー!

訳わかんなくなったSKY-HIが猫みたいに鳴いたのはめっちゃ可愛かったが(おい)、彼の手元のカンペに書いてあるカタカナ表記の中国語の読み方が使えなかったのには理由がある。

そして香港のファンが意地でも正しい発音を教えようとしたのには理由がある。

最終的に「これ間違ってるんじゃねえの!?」と舞台裏のスタッフにおどけて文句を言ったSKY-HIに盛大な拍手が送られたのにも(笑)理由がある。


そうなんです。あれ、違うんすよ。


あの場限りだと、特に日本からはるばるいらっしゃったFLYERSさんの中には、いまいちなんのことだか分からなかった方も多かったかと思います。

香港在住6年になる私ですが、こっちに来るまでは私も知らなかったことです。


SKY-HI Round A Ground 2017、通称RAGツアー。
香港公演に参戦された方も、そうでない方も…

この機会にぜひ、知ってください。
香港の言葉と文化、社会のこと。

『中国語』じゃない?

そもそも、中国語、という言語自体の定義が曖昧です。
一般的に中国語というのは、今の中華人民共和国で標準語として使われる「普通語」(プートンファ)のこと。

これは中国の首都である北京語を基準としていて、「マンダリン」とも呼ばれています。

一方、香港で使われているのは広東語(ゴンドンファ)。
広義では中国語の方言の中の一種なのですが、表記も発音も別物です。


まず、表記に関して。

グーグル翻訳などを見てみると、中国語の表記には大まかに2種類あることがわかると思います。

一つは簡体字
もう一つが繁体字

英語ではSimplifiedと、Traditional。

簡体字は主に普通語の表記で使われ、画数が少なく、簡略化された字です。
繁体字は、より伝統的な表記に近いもので、香港ではこちらを使います。

そして、発音。

正直、普通語と広東語は、ちょっと似てはいますが、全く違います。
それは、標準語と大阪弁、というような、イントネーションの違いだけではありません。

地元では、中国本土からの移住者向けに「普通語で習う広東語」のレッスンがあるほど(笑)


例えば、挨拶。

いわゆる「你好(ニーハオ)」っていうのは普通語の読みで
広東語では同じ漢字でも「レイホウ」と読みます。

いわゆる「謝謝=シェシェ」は普通読みで、
広東語では「多謝=ドーチェ」。


香港RAGに参加された方は、オープニングアクトで登場したJUDE(香港の歌手)さんが、「ダイガーホウ」と言っていたのに気付いたでしょうか。これは、「大家好」=「みなさんこんにちは」という挨拶です。

一方、SKY-HIがカンペに忠実に読み上げた一回目の挨拶では「大家」(=みなさん)を「ダージャー」と普通語で読んでいました。「シェシェ」も「ハオ」も、ライブ中によく言ってたけど、あれ、全部違うんです(笑)実は。


つまり、SKY-HIのカンペに書いてあった読み方は、普通語読みとしては間違いじゃないけど、香港人が慣れ親しんだ広東語ではない、という点で間違ってたんです。

ちなみに、今回アジアライブが行われた上海、台湾、香港の言語事情をまとめると、こうなります

上海:簡体字、普通語
台湾:繁体字、普通語
香港:繁体字、広東語


台湾はちょっと例外的に、普通語の発音だけども繁体字を使うそうな。
思うに、今回のアジアツアー(上海台湾香港)、同じカンペを使ってたのかなーなんて。



ここで、一部の方は疑問に思うかもしれません…
一回目と二回目のMCも普通語読みだったのに、なぜ会場が盛り上がっていたのか。

それは、ほとんどの香港人は学校で普通語を習うから。(広東語と普通語と英語を使いこなす香港人…恐るべし。)

で、三回目でついに、ファンのお直しが入ったってわけ(笑)

香港人は、どうしてもSKY-HIに広東語で話してほしかった。

その理由は、ただ慣れ親しんだ言語だからというだけではない、アイデンティティーと文化、政治の話になってきます…

『中国人』…じゃない…?

*ここからちょっぴり「かため」のネタになります。

そもそも、香港は事実上中国の一部ではあるものの、「我々は”香港”人だ」と、中国本土の人々と自分たちを区別する考え方が根強いです。

香港が1997年までイギリス領だったことは、皆様もご存知かと思います。

返還に際し、香港は今後50年間、中国本土とは違う独自の憲法、通貨、政治によって治められることが約束されました。いわゆる「一国二制度」です。


要するに、

いちおう中国の一部ってことになるけど
運営は君たちの好きにやっていいよ

っていう取り決めです。


以来、”中華人民共和国 香港特別行政区”の人々は、中国本土では認められない民主主義や言論の自由などの元に生きてきました。


本土では使えない、ユーチューブやフェイスブックツイッターも使い放題。文化も、平均収入も、教育も…香港人の生きている環境は、本土とはかなり違います。


独自のアイデンティティがあるのは自然なことなのです。


しかし最近、香港の独自性を約束したはずの中国中央政府の影響力が、日に日に増していることへの不安感が募っています。


3年前に世界を賑わせた「雨傘革命」という若者による繁華街の占拠も、影響力を増す中央政府への抗議運動という側面を持っていました。(実際はもっと複雑ですが…ディグってくだされ。)


その、「香港がどんどん中国ナイズされている感」の象徴とも言えるのが、「普通語を使う率が高まっている」現象、そして、

「いずれ広東語自体が抹消されてしまうのではないか」という不安感です。

詳しくはこちらのブログをぜひ。
englishcafe.hateblo.jp


本土からの移民や観光客が増え、
学校でも普通語の授業が増え、
ビジネスでの需要も増え…

ほとんどの香港人は、普通語、広東語、英語のトリリンガルになるように教育されていますが、これ以上普通語を使う頻度が増えれば、広東語が廃れてしまうのではないか…と懸念されています。


政治的にも、大きな出来事がありました。

今年はちょうど、中国返還20周年の年。

今年の返還記念日の式典には、中国の国家主席も参加したのですが…

そこで、香港の行政長官(トップ)が、普通語で、スピーチをしたのです。香港人をレペゼンする行政のトップが、公用語の広東語ではなく普通語を使ったことで、香港人の間に衝撃が走りました。



難しい話なのでざっくり要約すると、



「”香港人”であること」を大切にする人たちにとって、
広東語は大事な自分たちの言語。

中国本土の人々と自分たちを区別する大事な要素。

でも普通語も、将来成功したければ学ばざるをえない。

だから、「普通語」で話かけられると、
理解はできるけど、嬉しくないのです。



「私たち中国人じゃないし!」という、「中国ナイズ」への不安感をピンポイントでつついてくるのが、この言語問題なのです。

つまりは…

言語は、文化とアイデンティティーを表す大事なツール。

だからこそ、香港のFLYERSは意地でもSKY-HIに広東語で喋って欲しかった。

特に彼がコンシャスなアーティストであることを分かっているから、なおさらです。


海外ライブに際し、その土地の言葉でできるだけコミュニケーションをとりたい。
この、SKY-HIのエンターテイナーとしての心遣いはすごく素敵だし、嬉しいこと。
その心遣い自体は、みんな感謝していると思います。
だから、一回目と二回目のMCでは歓声が上がったんです。


ただ、上海、台湾に続く香港で、なぜ普通語のカンペをそのまま使うことになったのか。香港の公用語が前の会場と違うことに気づかなかったのか。誰も疑問に思わなかったのか… これはSKY-HI本人と言うより、むしろ主催者側の問題なのかもしれません。(小声)



あるいは、今回書いた香港の社会事情自体、日本であまり知られていないのかも…


そう思って、現地在住日本人としておこがましいかなぁとは思いつつ、解説のようなものを書かせていただきました。



日本からたくさんのFLYERS仲間が集結して、ものすごく幸せな時間だった香港RAG。

ライブ自体は最高すぎて、幸せすぎて…
でもMCがちょっとむず痒かった(笑)

最後の方は、SKY-HIも『中国語』が通じないことに気づいたようで、英語に切り替えてくれたので、良かったです。英語も香港の公用語の一つなので、こっちの方が正解かもしれません(笑)

ってかSKY-HI英語うまいなおい!(大文字)

もちろんペラペ〜ラってことでもないだろうけど、言いたいことをすらすらと言えてる感じめちゃカッコ良かった…


おまけ:MCレポ(覚えてる限り)

最後に、おまけとして今回のMCで何を言っていたか(ニュアンス)を、英語も含めて覚えている限り書いておきます。曲目などのネタバレ要素含みます。念のため。

中国語は、せっかくなので簡体字繁体字両方で書いてみます。

ちなみに私はほとんど中国語ができないので…(おい)今回のブログを書くにあたり協力してくれた我が友、フローレンスに愛と感謝とリスペクトを…

では。


一回目MC

S:「ホンゴン レイホウマ〜」
簡:香港、你好吗〜
繁:香港、你好嗎〜
香港、こんにちは・元気ですか〜
(ここだけ広東語だった)

S:「ダージャー カイシンマ?」
簡:大家 开心吗?
繁:大家 開心嗎?
みなさん楽しんでますか?

S:「カイシン ジューハオ〜」
簡:开心就好〜
繁:開心就好〜
楽しいなら良かった〜


二回目MC

S:「ヒョンゴンダー パンヤオ」
簡・繁:香港的 朋友、
香港の友達のみなさん、

S:「ニー シャン ウォーマ?」
簡:你想我吗?
繁:你想我嗎?
あなたは私のことを想っていますか?
(意訳:君たちは僕のことが好きですか?

S:「ウォー シャン ニー」
簡・繁:我想你
私はあなたのことを想っています。
(意訳:僕も君たちのことが好きだよ


三回目MC


S:「The next one is the most difficult」
次のやつが一番難しいんだよ

S:「ウォ フェイ ヨン ユェン ジ ジュ ジン ワン」
簡:我会永远记住今晚
繁:我會永遠記住今晚
私は今夜のことを永遠に忘れません。



ここ、広東語読みは、ンオ ウイ ウェン ユン ゲイ ジュ ガン マン。

そもそも普通語読みの時点で伝わってるか怪しくて(笑)なんのこと言ってるかようやくわかったファンが、口々に広東語での発音を教えるという展開に。で、冒頭の「あ゛ー!」のくんだりになるわけです。

その前に、あまりにみんなが口々に言うもんだから、
SKY-HIも「えっ?えっ?」みたいになって、

“I don’t know what is the correct answer”
(どれが正解なのかわかんないよ)

って困り顔で言ってたのも可愛かった。

最終的に、広東語(らしき)発音で文章の前半まで(我會永遠)は言えたんだけど…

S: ンオ ウイ ウェン ユン
客:(そうそう大体そんな感じ!)(拍手)
S: ジ ジュ ジン ワン
客:(ガクッ)(また普通語やん笑)
S: こ〜れ間違ってんじゃねえかぁ!?
客:(そうそう!!!)(盛大な拍手)
S:全然伝んねぇぞぉ〜お〜らびっくりダァ〜
  オッス、おら孫悟空

客:(笑)
S:え、中国語じゃない?あぁー、そうなの!?


S: I can’t use this.
  (=これ使えないね)  

   OK! I love you!
  (オーケー!愛してるよ!…)

  …I won’t forget about this day, tonight. Forever.
  (僕は今日の、今夜のことを忘れません。永遠に。)

And sometimes, I’ll be back! I’ll be back! Promise.
 (そしていつか、戻ってきます。約束だよ。)



あぁー、ここ超かっこよかった!
だってなんのためらいもなくOK! I love you. だよ(おい)
何がオーケーやねんけしからんごちそうさまです。

しかもプロミスしてくれたし!また香港来てね〜!



あと、どこかのタイミングで、

"I don't know which language to use... Chinese, English, Japanese..."
(どの言語使うのかわかんなくなってきた…中国語、英語、日本語…)

とも(困り顔で)(可愛い)言ってたと思うし、


LUCEの終わり頃に、

前は死にたいと思うこともあった。
でも今は君たちに会えたおかげで幸せで、
生きたいと思うようになった

的なことを英語で言ってた気がする。

あと、キーボードが出てきた時に、

「俺のキーボードいろんな音が出せるんだお!」
ってな感じで新しいプラモデルをゲットした小学生よろしく嬉々としていろんな音を演奏してくれたのが可愛かった。

そのくんだりで、
S:"And I can play something like... like... あぁー…"
(こんな音も出せるんだよ…えーっと…)
客:”あー…”
S:”あぁぁ〜”
客:”あぁぁ〜”

S:アァァァァ〜↑

ってめちゃくちゃオペラ歌手みたいなファルセット披露してたの面白すぎた。
しかもフリースタイルコーナー終わったあとにまた同じネタ繰り返してた。天丼かよ(笑)気に入ったのね。

ノリのいい香港ファンとの団体芸でした(笑)


あとは、ナナホリの間奏部分で、

「香港と日本、近いか遠いかなんてわからない。でも、音楽をやっている以上、君たちのことをいつも近くに感じているし、必ずまたあいにくる。」
みたいなことを日本語と英語で言っていた。
間奏ギリッギリまで想いを伝えようとしてくれたのが、すごい嬉しかった。



こんな感じでしょうか。
本編感想を書く前にまずこれ、という(笑)
ちょっと、本編は最高すぎて…もうちょい余韻に浸らせてくださいな。

長らくお付き合いいただきありがとうございました。